洗濯おばさんは、すっかり元気です。声の張り、足取り、どれも軽やかです。一方で、設計おじさんはまだ本調子ではありません。同じ感染でも回復に差が出る。個体差というものです。遺伝子先生は、「免疫応答の強さや回復速度は遺伝的背景と体力に左右される」と言いました。夕食の時間、部屋にはミスチルのライブ映像が流れています。洗濯おばさんの推しバンドです。ほどなくして帰宅した洗濯おばさんが、「何かご機嫌とりですか?」と、設計おじさんに問いかけました。設計おじさんは、「何もない」と言っています。けれど。ハクには企みがわかります。
音量が、絶妙なのです。主張しすぎず、しかし確実に耳に届く設定。選曲も、通好み中心。これは偶然ではありません。設計おじさんが、そろそろミスチルのライブDVDのローテーションに飽きていませんか?あらたにライブDVDが欲しいと思いませんか?と洗濯おばさんにメッセージを送っているのです。言葉ではなく、選曲で態度を示す。高度なコミュニケーションだそうです。企みは、悪意ではありません。デッキから観察しながら、ハクは静かに思います。設計おじさん、言葉で伝えた方がいいと思いますよ。洗濯おばさんに全く伝わっていないようです。
